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CASE STUDIES 導入事例

Vol.01 東京大学医科学研究所 細胞プロセッシング研究部門 (東京)

安全で安定した品質の臍帯血をより多くの患者さんへ
東京大学医科学研究所 細胞プロセッシング研究部門 付属病院輸血部部長
客員教授 理学博士 高橋 恒夫 
東京大学医科学研究所 細胞プロセッシング研究部門 附属病院輸血部部長 客員教授 理学博士 高橋 恒夫 氏

国内1000例を突破した臍帯血移植

ここ数年、臍帯血移植が著しい進展をみせています。東京大学医科学研究所細胞プロセッシング研究部門は、わが国における臍帯血移植の道を、医科研附属病院とともに切り開いた先駆的研究機関です。
へその緒と胎盤に含まれる血液が、赤血球や白血球、血小板などをつくる造血幹細胞を豊富に含み、新しい幹細胞の源として注目されるようになってきましたが、この臍帯血を白血病や先天性免疫不全症などの患者に移植する治療が行われはじめたのはそれほど古いことではありません。
1988年にフランスで小児への臍帯血移植が行われたのが世界で初めてのことであり、わが国では、1994年、兄弟間による臍帯血移植が初めて実施され、1997年には非血縁者間の臍帯血移植がスタート。さらに1998年、わが国初の成人への臍帯血移植が医科研附属病院で成功しました。現在、わが国における臍帯血移植の実施数は累計で1079例(2003年7月末現在、日本さい帯血バンクネットワークURLより)にのぼっています。
臍帯血に含まれる造血幹細胞は、骨髄中のそれよりも増殖能力が旺盛であり、骨髄移植では患者の体重1kgあたり3億個の細胞がないと移植できませんが、臍帯血の場合にはその10分の1程度の細胞数でも移植が可能です。また、移植後の免疫反応である移植片対宿主病(GVHD)も、新生児の未熟な免疫機能の助けも手伝って骨髄移植よりも軽く、そのため、骨髄移植の場合にはHLA(白血球の血液型)抗原を原則として6座のうち6座とも適合させなければなりませんが、臍帯血移植では、6座のうち4~5座適合すれば移植が可能といわれています。

臍帯血を安全・効率的に分離・保存

臍帯血移植を推進するためには、採取した臍帯血を必要とする患者に提供する時まで保存する施設が不可欠です。同細胞プロセッシング研究部門は、1997年、安全かつ効率のよい細胞プロセッシング技術を検討してきた結果にもとづいて、東京臍帯血バンクを立ち上げました。その後全国各地に臍帯血バンクが設立され、現在、日本さい帯血バンクネットワークに参加する臍帯血バンクは11カ所になりましたが、東京臍帯血バンクは、そのなかの中心的存在といえます。
ここ細胞プロセッシング研究部門で行われている臍帯血の分離・保存の流れは、届けられた臍帯血にIDナンバーをつけることから始まります。以後、臍帯血はすべてこのIDナンバーで管理されます。
HLAタイピングや各種検査用のサンプリングのあと、HES(赤血球沈降剤)を注入後、遠心分離します。分離された臍帯血は、血漿画分、バッフィーコート層(主に白血球からなり、造血幹細胞を多く含む)、赤血球画分に分かれます。このうち赤血球画分以外を分離バックに移します。分離バックは再び遠心分離され、今度は血漿画分を除きます。つまり、この分離プロセスでは、移植時に不要となる赤血球画分、血漿画分を除き、必要な造血幹細胞を効率よく保存することが目的です。
最終的に分離・精製された白血球画分は、DMSOとデキストランからなる凍害保護液で守られ、金属製のキャニスターにセット、臍帯血保存システム「Bioarchive」で-196℃の液体窒素の中に凍結保存されます。

品質保証体制確立へ ISO9001取得

今、全国の臍帯血バンクで保存されている臍帯血は、検索対象として公開されている総数が15,857本(2003年9月1日午前3時現在)。高橋恒夫教授は「2万検体あれば難病に苦しむ患者さんに適合する臍帯血のほぼ90%がカバーできるといわれていますが、数とともに大切なことは質です」と話されます。
同細胞プロセッシング研究部門の主要施設であるバイオクリーンルーム(セルプロセッシングシステム)は、1996年に当社がGMPに準拠して設計・施工したもの。その後、改造が加えられましたが、「バンクでこれだけのグレードの施設を持つのはうちだけ」といっていただけるほど、現在でも高いクオリティーを有しています。そのなかで「大切なところだけを効率よく濃縮して安全なものを提供する」(高橋教授)という仕事が進められているのです。
高橋教授の品質保証体制確立への強い意志は、ISO9000シリーズの取得に如実に表れています。
2001年3月、ISO9002を取得し、さらに今年4月、2000年度版のISO9001を取り直しています。これは国内の臍帯血バンクでは初めてのことであり、世界的にもミラノ臍帯血バンクに次ぐ2番目の取得。輸血・細胞療法の分野でもわが国で初めてのことです。
確立した品質保証体制で国際的な臍帯血バンクネットワーク「NETCORD」への参加も視野に入れる同細胞プロセッシング研究部門が、安全で安定した品質の臍帯血をより多くの患者に提供することに注ぐ努力はつきることがありません。

イメージ
凍結保存キャニスターイメージ
凍結保存キャニスター
高橋教授とスタッフの方々イメージ
高橋教授とスタッフの方々
臍帯血の分離・保存分野で臍帯血の移植の道を切り開く

 

東京大学医科学研究所 細胞プロセッシング研究部門
開設 1995年10月
所在地 東京都港区白金台4-6-1
東京大学医科学研究所イメージ

納入機器

バイオクリーンルーム(セルプロセッシングシステム) 77.66m2/バイオハザード対策用キャビネット:MHE-130B1×1台/クリーンベンチ:MCV-131BSF×3台/超低温フリーザ:MDF-2136AT×1台/超低温フリーザ:MDF-U481AT×2台/薬用保冷庫:MPR-311D×2台

細胞プロセッシング研究部門イメージ
東京大学医科学研究所の一画
にある臨床研究A棟の3、4階が
細胞プロセッシング研究部門

細胞治療を東京大学医科学研究所においてさらに促進させる目的で開設された研究部門。とくに臍帯血移植について基礎的および実際的な研究を進め、医科研附属病院との連携でわが国における臍帯血移植の道を切り開いた先駆的研究機関として知られています。東京臍帯血バンクを設立し、臍帯血の分離・保存の分野でも、技術的水準とクオリティーの高さで、全国の臍帯血バンクの中核的存在です。また、樹状細胞を用いた細胞治療の可能性を探る研究も進められています。

超低温フリーザMDF-2136ATイメージ
白血球画分のテストサンプルなどを-135℃で仮保存する超低温フリーザMDF-2136AT
クリーンベンチMCV-131BSFイメージ
P2レベル、クラス100のクリーンルーム内で分離プロセスが進められるクリーンベンチMCV-131BSF
超低温フリーザMDF-U481ATイメージ
プラズマ・赤血球・血清・バッフィーコートなど、各種血液サンプルを保存する-85℃の超低温フリーザMDF-U481AT
バイオハザード対策用キャビネットMHE-130B1イメージ
各種サンプリングや調製に欠かせないバイオハザード対策用キャビネットMHE-130B1

掲載内容は2003年9月現在のものです。

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